ISNTE-II開催報告(平成29年12月12日~15日開催)
イベント報告
2017年12月12日~15日に東京工業大学すずかけホールにおいて、第2回負熱膨張国際会議 (The 2nd International Symposium on Negative Thermal Expansion and Related Materials: ISNTE-II) が開催された。ISNTEは、負熱膨張材料に関する研究者が、物質・材料の枠を超えて一堂に集うことにより、現象のより深い理解と、機能向上や新規材料開発、さらには応用を含めた他分野への波及・発信を目的に、研究者有志により組織された国際会議である。2015年、北京科技大学が中心となって第1回目が北京で開催され、今年、東京工業大学・フロンティア材料研究所、WRHI、名古屋大学・大学院工学研究科とが中心となって2回目を横浜で開催した。

招待講演27件、一般講演(ポスター講演)28の計55件の発表があり、国内外から76名が参加した。ISNTE-IIの特徴として、口頭発表は全て厳選された招待講演としたことがあげられる。「物質・材料の垣根を取り払う」という目的を達成するべく、当該分野の主要な研究者ほぼ全てといってよい多彩な顔ぶれが、国内外から招待講演者として集まった。トピックスとして、Open Framework Materials (8件)、Ruthenates (2件)、Charge/Orbital Ordering (3件)、Magnetic Materials (4件)の4カテゴリーに加え、関連分野としてFundamental Physics (3件)とAdvanced Measurement (5件)の2カテゴリーを設定した。さらに、基調講演2件からなるReview Sessionを会議の冒頭に設けた。この基調講演により、様々な研究背景を持つ参加者の間で当該分野の現状や今後の展望・課題などが共有でき、その後の活発な議論につながった。


ポスターセッションでは、大学院学生や博士研究員など若手研究者により28件の発表があった。Open-Framework and Other NTE/ZTE Materials (8件)、Charge/Orbital-Order and Related Materials (12件)、Magnetic Materials (8件)の3つのカテゴリーに分類され、参加者が関連する話題で議論しやすいよう配置などを工夫した。本会議では、若手研究者奨励のため、Poster Awardを新設した。招待講演者を中心とするシニアの参加者の投票によりGold Poster Award 2件、 Silver Poster Award 3件、Bronze Poster Award 3件が選ばれた。これまで最大の体積変化量を有する新物質に関する発表など、質の高い講演が多く、当初は合計で4、5名程度を想定していたが、想定人数では収まりきらず、7名を表彰した。授賞式のプレゼンターは、Review Sessionにおいて最初に基調講演をした英国Durham大学教授のJ. S. O. Evans氏が務めた。同氏は著名な負熱膨張材料ZrW2O8の発見者として名高い。


本会議のもう一つの特徴は、民間企業からの積極的な参加があった点であり、負熱膨張材料の量産に取り組んでいる国内材料メーカー2社による量産品の展示をはじめ、ポスター講演1件、聴講者7名の参加を得た。新規負熱膨張材料の量産に関しては我が国が諸外国に先駆けて成功しており、国外の参加者は「すでに市販のレベルにあるのか」と驚きを隠さない様子であった。
3日目の夜には懇親会を開催し、61名が参加した。本会議での招待講演者であり、ISNTE-IのExecutive Organizerでもあった中国・北京科技大学教授のX. R. Xing氏にご挨拶をいただいた。会議の講演者、若手研究者のみならず、民間企業からの聴講者も参加し、交流が深められた。

4日目最終日、全講演終了後、第3回目の会議(ISNTE-III)が2019年7月に英国Edinburghで開催されることが、次回会議のExecutive Organizerである英国Edinburgh大学教授のJ. P. Attfield氏より説明された。