共同作業による運動パフォーマンスの向上 人数が多ければ多いほどうまくなる 高木敦士 WRHI 特任助教
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共同作業による運動パフォーマンスの向上、人数が多ければ多いほどうまくなる
バイオインタフェース研究ユニットの高木敦士特任助教とロンドンインペリアルカレッジ、東京大学の研究成果がeLife誌に掲載されました。
共同で運動作業を行うとき、グループの人数が増えれば増えるほど、各メンバーの運動パフォーマンスが向上することを明らかにしました。本研究は、大きなテーブルを多人数で動かすような共同作業の際、集団全体でどのように動きを調整しているのかを解明するものです。
2,3,4人からなるグループのメンバーは、ランダムに動きまわる視覚ターゲットに手の動きを追従させる運動課題を一緒に行いました。その際、ロボットインタフェースと呼ばれる特殊な装置によって仮想的なバネを設定し、メンバーの動きの間に力学的相互作用が生じるようにしました。この状況では、手の触覚を介して他人の動きを互いに検知しあうことが可能となります。研究者のグループはこれまですでに、2人ペアで同様な運動課題を練習すると、1人だけで練習するよりも、よりうまく運動課題を実行できることを示していました (https://www.imperial.ac.uk/news/177982/robots-help-people-improve-physical-tasks/)。今回eLife誌で発表した研究は、共同作業を行う人数を1,2,3人と増やしていくと、運動パフォーマンスがさらに向上することを示したものです。
筆頭著者である東京工業大学科学技術創生研究院の高木敦士博士は「グループのメンバーが触覚情報を活用して、共同で行う動作を素早く調整できることに非常に驚きました。混雑した結婚式会場でテーブルを移動させようとしている状況を考えてみてください。口頭でのコミュニケーションによって、テーブルが何にもぶつからないように動作を調整することは、グループの人数が増えれば増えるほど困難になるはずです。しかし、触覚を介して互いの動作情報をやり取りすれば、人数が増えてもほんの数秒で動作を調整することができるのです」と述べています。
共著者であるインペリアル・カレッジ・ロンドンのエティエン・バーデット教授は「お互いの動きが影響しあうよう連結したとき、グループの人数が増えれば、ランダムな力の影響がノイズのように働きパフォーマンスが低下するのではないかと予測していました。ところが、実際には、ノイズ量が減少するように、個々人のパフォーマンスが向上したのです」と加えています。
研究チームは、このような動作調整が可能なのは、触覚情報を通じてメンバーが互いの動作目標を推定できるためではないかと考えています。著者らの先行研究では、同様な機序を実装し、人間と共同で動作を行うことのできる「人間のような」ロボットパートナーを設計していたからです。本研究では、コンピュータシミュレーションを用いてグループのメンバー間の情報のやり取りを詳しく検討し、上記の仮説を支持する結果を得ています。高木博士は、このような動作調整機序への理解が深まれば、複数のロボットが共同で作業を行うときのアルゴリズムを作り出すことも可能であると考えています。
本研究はインペリアル・カレッジ・ロンドンと東京大学の共同研究として実施されたものです。
発表論文
Atsushi Takagi1,2, Masaya Hirashima3, Daichi Nozaki3, Etienne Burdet2, “Individuals physically interacting in a group rapidly coordinate their movement by estimating the collective goal”, eLife, DOI: https://doi.org/10.7554/eLife.41328
- Institute of Innovative Research, Tokyo Institute of Technology.
- Department of Bioengineering, Imperial College London.
- Graduate School of Education, University of Tokyo.
*Corresponding authors email: takagi.a.ae@m.titech.ac.jp